生ごみ処理機の火災の原因と対策

生ごみ処理機は電気やガス、微生物などを使用して処理を行うため加熱を伴います。生ごみ処理機による火災の発生も起こっており、導入の際には安全対策を行う必要があります。事故概要と発生原因を知り、適切な対策を行いましょう。

神奈川県大和市のショッピングセンター爆発火災

平成15年11月、神奈川県大和市のショッピングセンターで、生ごみ処理室が爆発する事故が起こりました。この事故を受け、環境省は平成17年6月22日に安全対策指針「加熱を伴う業務用生ごみ処理機における安全対策指針」を公布しました。
火災の概要、事故原因をまとめました。

事故概要

大和市消防本部より発表された、神奈川県大和市のショッピングセンター爆発火災概要によると、出火日時は平成15年11月5日の午前2時頃。
ショッピングセンターは鉄骨鉄筋コンクリート構造の、地下1階地上5階建てで、1階生ごみ処理室より出火したとみられます。焼けた状況から判断して、さらに詳しい出火箇所は生ごみ処理機発酵槽内の底層部とされました。
出火した生ごみ処理機は、生ごみを好気性微生物によって発酵・分解し、肥料原料や土壌改良材に変えるタイプのものでした。発酵槽・微生物脱臭層・自動投入装置で構成されています。
出荷前の生ごみ処理機は、自動投入装置が途中で停止し、撹拌装置が開始点に戻ったところで停止、エアレーション装置(生ごみ内部へ熱風を送る装置)は作動中でした。

事故原因

出荷前の状況から、再現実験なども含めて出火原因が検討されました。自動投入装置と撹拌装置が停止したにも関わらず、熱風が送られ続けていたため、発酵槽底層部のエアノズル先端付近にある杉チップや処理物が過熱されて徐々に発火したと考えられています。

その後水素・一酸化炭素・メタンなどの可燃性ガスが発生して滞留したため爆発に至り、その威力はTNT数kg以下の爆発威力に相当すると思われます。
被害状況は、1階生ごみ処理室の業務用生ごみ処理機が1基焼損、同室の壁276㎡、外周フェンス20m、消防車輌3台が破損し、消防隊員9名、警察官、警備員各1名が負傷しています。

安全対策指針

この事故によって安全対策の指針が以下のように示されています。各項目に沿って説明します。

機器・設備に求められる安全対策

機器・設備における安全対策について、それぞれ項目別にまとめました。

温度管理装置

火災の発生を未然に感知し防ぐためには、処理物の温度を推定するための処理槽内などの温度を測定し、測定値が異常高温となったら機器全体を自動的に停止する制御機能が必要です。
また異常高温を検知して機器が停止した場合には、測定温度が低下しても自動的に再起動しないように設定します。

安全装置

なんらかの異常によって撹拌装置が停止した際には、加熱装置が自動的に停止するような制御機能が必要となります。
また安全装置が作動したら、警報などによって広く知らせるための装置を備えておきます。

室内設置時の設備

業務用の生ごみ処理機を室内に設置する際には、必要な設備を設けて同室を常時換気する必要があります。また機器の処理方式・処理能力・加熱のエネルギー現の種類などを明記し、消防隊が消化活動をスムーズに行えるための情報を出入口付近などに掲示することも大切です。
必要な設備とは以下の通りです。

  • 可燃性ガスが漏えいした場合の屋外への排出装置
  • 故障発生を警報などで知らせる装置
  • 可燃性ガス検知・警報器の設置
  • 機器の概要をわかりやすい場所に掲示

運転・維持管理に求められる安全対策

生ごみ処理機の運転や維持管理における安全対策を、それぞれの項目で説明します。

管理体制

生ごみ処理機の設置者は、機器が正常かつ安全に運転・維持できるよう、管理体制を整備する必要があります。
大規模スーパーマーケットや大型ホテルなど、生ごみの排出者が複数にわたる施設や、生ごみ排出量が多く複数の作業従事者が必要な場合には、管理責任者を選任して管理体制を徹底することが望ましいとしています。
管理責任者は、生ごみ処理機に関する十分な知識があり、必要なマニュアルの整備や教育を行い、作業従事者・生ごみ排出者の両方に周知徹底することも大切です。

運転管理

メーカーによって提示された各種マニュアルを熟知し、疑問点などがある場合には即メーカーに問い合わせる必要があります。
また生ごみ排出者に対しては、処理できないごみの項目や不適切なもの混入によって起こり得るトラブルや事故について周知徹底を行い、生ごみの分別に協力を求めることも重要です。

保守点検

日常的な点検はメーカーに提示された項目・要領・頻度を守って行いましょう。定期的な保守点検については、メーカーに提示された内容に従って、適切に実施してください。

生成物の保管

生ごみから生成されたものを室内に保管する場合には、可燃性ガスが滞留する可能性に留意して、換気設備を設ける必要があります。万一可燃性ガスが発生しても、爆発のリスクを避けるためです。
また生成物保管室の出入口付近に、生成物が保管されていることや最大保管容量、保管状況など必要な事項を掲示しましょう。

教育の実施

生ごみ処理の作業従事者などには、事前教育を行い、生ごみ処理機器の処理原理、運転操作方法、日常点検手順、異常発生時の対応方法などを周知徹底する必要があります。
また誤操作防止や異常時における適切な対応も常に心がけなければなりません。
さらに、生ごみの排出者に対する事前教育も重要です。必要な情報や対処方法などの周知徹底に努め、不適切なごみの排出にはどのようなリスクが伴うかも教育しましょう。

異常時の連絡体制の整備

万が一生ごみ処理機で事故が発生しても、被害は最小限に食い止めなければなりません。そのためには警報や異常を発見した場合の連絡ルート、対処方法などについてルールを定め、作業従事者などに周知しておきます。
また通報のための連絡先や連絡ルートは見やすい場所に掲示しておきましょう。

参照元:[PDF]総務省消防庁「加熱を伴う業務用生ごみ処理機 における安全対策指針」
(https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/items/tuchi1706/pdf/170622an124-b2.pdf)

そのほかの事故

ほかにも製造メーカーが把握している業務用生ごみ処理機の事故が報告されています。
いずれも乾燥式の生ごみ処理機で、誤操作によるものが原因とされています。どのような誤操作であったかは以下の通りです。

  • 標準処理時間を超えた長時間運転をし、処理物を炭化させたことにより発煙
  • 1回の処理完了ごとに生成物を取り出す必要があった機種であったが、生成物を取り出さずに運転を行ったため、処理物が炭化して発煙

生ごみ処理機は運用と安全対策の徹底が大切

生ごみ処理機で火災を起こさないためには、どのような原理で生ごみを処理する機器であるかを知り、操作方法や点検などメーカーのマニュアルをしっかり守った上での運用を行いましょう。
また事故を起こさないための安全対策を、作業従事者と生ごみ排出者の両方に徹底することが大切です。

導入後のミスマッチをなくす!実績が豊富なメーカーの
おすすめ業務用生ごみ処理機3選

消滅型「ゴミサー/ゴミサポーター」

生ごみを99.9%減容
処理の手間を大幅カット!
生ごみ減容率 99.9%
生ごみの処理後の形態 水と炭酸ガスに分解
メンテナンス頻度 特殊なメンテナンス必要なし
メンテナンス内容
販売年数 25年(1997年~)

堆肥型「バイオクリーン」

生ごみを使って
リサイクル
良質な堆肥を
つくれる
生ごみ減容率 記載なし
生ごみの処理後の形態 約85%が水蒸気や炭酸ガスに分解
残りの一部が堆肥になる
メンテナンス頻度 定期点検あり・要問合せ
メンテナンス内容 要問合せ
販売年数 17年(2004年~)

乾燥式
「業務用(電気)
乾燥式生ごみ処理機」

3種類のモードで効率的に処理
高温殺菌で衛生的
生ごみ減容率 記載なし
生ごみの処理後の形態 処理品
メンテナンス頻度 訪問定期点検・年1回
メンテナンス内容 要問合せ
販売年数 記載なし

Googleで「業務用生ごみ処理機」と検索して上位表示されたうち、100キログラムの処理能力を持つ機械の取り扱いがあるメーカー18社をピックアップ。
なかでも販売年数の高い会社(公式HPに販売年数を明記しているうち)の生ごみ処理機を、方式ごとに1社ずつ「おすすめの機種」として掲載しています。

※乾燥式のみ販売年数の明記のあるメーカーがなかったため、Google検索で上位かつ会社の創業年数が高い会社を選定しました。
※情報は2021年5月時点のものです。