食品廃棄物の不正処理について

食品廃棄物が不正に転売され、食品として流通するという事案が社会問題となったことがありました。このことから食品廃棄物の不正処理について監視等が強化され、廃棄物の排出事業者の責務についても義務付けられました。食品廃棄物の適正な処理について解説します。

過去にあった食品廃棄物の不正処理

平成28年1月、食品製造業者等から処分委託された食品廃棄物が、産業廃棄物処理業者によって不正転売されるという事案が起こりました。不正転売されて食品廃棄物は食品として流通され、社会的な問題に発展し、警察による捜査・立件が行われました。平成29年1月までには廃棄物処理法(マニフェスト虚偽報告(違反、食品衛生法(無許可営業)違反及び刑法(詐欺罪)違反により、関係者が有罪判決を受け、刑が確定しています。

参照元:環境省 https://www.env.go.jp/press/104161.html

排出事業者責任

廃棄物を排出する事業者には、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」によって、廃棄物を自らの責任において適正に処理することが義務づけられています。
処理を委託する場合でも、排出事業者が処理業者の選定、委託契約、実地による確認、マニフェストの運用等を適切に行う必要があります。
委託業者による不適切な処理であっても、排出事業者は廃棄物処理法の罰則の対象となるリスクがあるだけでなく、社会的信頼を損なう可能性があります。

  • (食品)廃棄物の発生
  • 運搬
  • 中間処理(再資源化/肥料化・飼料化等)
  • 最終処分(埋立)

廃棄物を適切に処理するためのポイント

廃棄物を適切に処理するためには、以下の7つのポイントがあります。詳細は後述しますが、以下の項目について正しい知識が必要ですので、しっかりと理解しておくことが大切です。

  • 廃棄物の種類
  • 廃棄物の保管
  • 処理業者の選定
  • 委託契約
  • 実地確認
  • 不正転売防止
  • マニフェストの運用

マニフェストの運用

産業廃棄物管理表(マニフェスト)には、以下の内容を記載して収集運搬業者へ引き渡す際に交付します。

  • 誰の廃棄物(種類と量)
  • 誰が収集運搬するか
  • 誰が処理するか

産業廃棄物処理業者は、委託された処分を完了した年月日を記載し、排出業者に返送します。

委託処理における排出事業者のリスク

委託処理が適切に行われていない、また法令違反が行われた場合、排出事業者は行政処分や罰則が科せられます。悪質とみなされれば社名が公表され、社会的信用の失墜に繋がりますので、十分な注意が必要です。
さらに処理業者が適正に処理できない場合には、排出事業者が回収し処理しなければならなくなります。経済的にも新たな負担となるリスクがあります。

廃棄物の種類

廃棄物には一般廃棄物と産業廃棄物の2つに区分されます。事業活動に伴い発生した食品廃棄物は、以下のように区分されています。

  • 固形状のもの(菓子、野菜くず、醸造カス等)
     食品製造業で原料として使用したもの(製造工程から発生したくず等)→産業廃棄物
     それ以外(食堂から発生したくず等)→一般廃棄物(事業系)
     それ以外(スーパーマーケット、飲食店等)→一般廃棄物(事業系)
  • 固形状のもの(菓子、野菜くず、醸造カス等)
  •  食品製造業で原料として使用したもの(製造工程から発生したくず等)→産業廃棄物
  •  それ以外(食堂から発生したくず等)→一般廃棄物(事業系)
  •  それ以外(スーパーマーケット、飲食店等)→一般廃棄物(事業系)

スーパーや飲食店、物流倉庫などの社員食堂から発生したくず、出荷後の回収品等以外はすべて産業廃棄物となります。

  • 泥状のもの(味噌 等)→産業廃棄物(汚泥)
  • 油状のもの(廃棄用油 等)→産業廃棄物(廃油)目
  • 液状のもの(調味料、飲料 等)→産業廃棄物(廃酸、廃アルカリ)

廃棄物の適切な保管

産業廃棄物の保管には以下のように基準が定められています。

  • 産業廃棄物の保管場所に廃棄物の種類、数量等を表示した掲示板を見やすい箇所に設置しているか
  • 産業廃棄物が飛散、流出、悪臭が発生しないよう措置がされているか(フタ付き容器による保管等)

適切な処理業者の選定

適切に処理を行う信頼できる処理業者を選定する必要があります。ポイントは以下の6点です。

  • 委託先は委託する廃棄物(一般廃棄物か産業廃棄物か、産業廃棄物の場合は品目も)の許可等を有しているか
  • 許可は期限切れではないか
  • 委託する廃棄物が適切に処理できる方法か
  • 中間処理の委託の場合は、中間処理後の産業廃棄物の最終処分の場所や方法は適切か
  • 適正な金額か(不自然に安くないか)
  • 委託業者の選定にも実地確認を行い、実際に処理が可能か確認する

実地による確認

自社から発生した廃棄物が処理される事業場を訪問して、処理施設の稼働状況や委託した廃棄物が委託契約どおりに適正に処理されているかを定期的に実地確認する必要があります。

  • 事業場の出入口の見やすい箇所に、中間処理の場所である旨等を記載した掲示板があるか(縦60㎝以上×横60㎝以上)
  • 事業場が清潔に保たれているか(悪臭の発生、汚水等の流出がなく、害虫等の発生はないか)
  • 廃棄物の処理施設が適切に稼働しているか(肥料化であれば十分発酵されているか、焼却であれば燃え残りがないかなど)
  • 産業廃棄物の保管場所に廃棄物の種類、数量、高さ等を表示した掲示板があるか(縦60㎝以上×横60㎝以上)
  • 処理前、処理後の廃棄物について、過剰な保管状態となっていないか
  • 保管施設で腐敗や異臭を発生することなく適切に保管されているか
  • 受入保管、処理施設への投入、搬出について、記録が適切に管理されているか
  • 実際の搬入量、処理実績(肥料化、飼料化した場合は販売実績)を確認した結果、十分な処理能力があるか

不正転売防止

不正転売を防ぐために、排出事業者自身が廃棄物が商品とならないように措置した上で処理業者に引き渡すことが望ましいとされます。自ら対策を行うことで不正転売を防ぐことができます。
具体例は以下の通りです。

  • 処理委託前に包装を除去してそのまま商品になら内容に措置する
  • 賞味期限が切れていることがわかるように表示する
  • 廃棄物であるまたは食用に適さない旨の印を付ける
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※情報は2021年5月時点のものです。